※以下の各記事につきまして,図表・記事の無断転載を禁じます。

文書やHPでの引用・紹介の際には,出典(「博士世界」HPや当HPのURLなど)を明記してください。

 

 

不定期コラム 第1回  博士世界読者にオススメBookレビュー

ピーター・J・ファインベルマン(著)・西尾義人(訳)「博士号だけでは不十分! :理系研究者として生き残るために」白楊社,2015.

(原題:“A PhD Is Not Enough! : A Guide to Survival in Science”)

 高校を飛び級で卒業し,コロンビア大学を最優秀の成績で卒業した物理学者である著者による(米国における)実践的な研究者としてのサバイバルガイドです。輝かしい経歴を持ちながらもポスドクから就職する際に苦労した(都市計画のアドバイザーの仕事に応募するくらい)ことを踏まえ,その後の研究者人生での経験を元に書かれています。なお,理系研究者とありますがそれ以外の方にも共通して活用できる部分はあると思います。

 日米で事情が異なる点も多々あると思いますが,本書を貫くメッセージは,若手のうちは「生き残る」ために,就職活動であることを意識して研究活動を進めることが重要ということだと思います。博士世界の読者の皆様にも有益な情報はたくさんあります。例えば,

 

【研究室選び】

  • 院生が研究テーマの全体を把握できているか確認する(私は社会科学系の人間なのでよくわかりませんが,自然科学系だと大きなテーマがあってそれを学生が分業しながら進めていますよね)

  • 指導教員は若手よりも立場の安定した教員を選ぶ(研究成果の取り合いにならないし,教員のネットワークを使えるから)

【研究の進め方】

  • 口頭発表は将来の雇い主へのアピールになりうることを意識すること
  • 長期的な展望を持ちつつも,在学期間や任期の範囲内で「終わらせる」ことができるテーマを選ぶこと
  • 短くてもいいからたくさん論文を書くこと(数が多くて悪いことはない)

【ポスドクから先】

  • 最終地点が教授だとしても助教から上り詰めるのは避けること(授業の準備が忙しいし,身分保障が不安定)。それよりも公的・民間研究機関の研究員になる方が良い(給与も良いし,研究所のテーマとうまくはまっていれば研究に必要な機材を買ってくれるから)。
  • 「技術志向型」ではなく「問題志向型」たれ(技術は枯れる)

 

 詳細な理由については本書をお読みください。とにかくアウトプットを自分の将来のために活かす姿勢が重要ということですが,よくよく考えると実はどのような職業でも共通のことだと感じます。また,就職先について大学ではなく,まずは研究機関に行くべしという指摘には膝を打ちました(※)

 社会科学系で言えば,公的研究機関にはデータの宝の山が眠っていることが多々有り,一般的な分析ができれば素晴らしい研究成果になることがあります。逆に言えば,こうしたデータにたどり着けないとデータの時点で負けてしまっているわけです(所詮,分析は道具にすぎません)。そのようなデータにアクセスできるのは必ずしもその研究者の実力ではありませんが,分析結果はその業界における素晴らしい論文になるはずです。そう考えると,公的研究機関への就職は,理系に限らず,頭の片隅に置いておくといいなと思いました(博士学生の就職先は第5号をごらんください。また,最新版の博士学生の就職先のデータに関するコラムはこの次に書きます!)。

 

 最後に,本筋ではありませんが,論文の主語に関する話は驚きました(p.90)。著者曰く「はるか古代」(約30年前のことだそう)の論文では,主語は無生物主語あるいは「We」とするが,今は「I」と書いても良いそうです。この主語は「We」と書けという教えは私も受けたことがあるのですが,意味不明だと思っていたところです。明日からは自信をもって「I」と書くようにします(もちろん,共同で調査したときは「We」と書きますが……)。

 

 平易な文章でさらっと数時間で読めてしまいます。少し,自分自身の来し方行く末を考える時間ができたときに読んでみると良いと思います。それでは,また,次回のコラムで! 

 

(※)執筆者個人の感想であり,博士世界編集部全体としての見解ではありません。

 

(参考URL)標記の本の出版社による紹介ページ

http://www.hakuyo-sha.co.jp/science/%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E5%8F%B7%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%AF%E4%B8%8D%E5%8D%81%E5%88%86%EF%BC%81/

 

(執筆:マスター)


第5号臨時記事 「大学教員の就職・職位・給与」について

 末広アパート2号記者が大学教員についての統計をまとめました。 

ダウンロード
どの年代で教員に就職して,何歳頃にどの職位で,給与はどれくらいなのか…?
大学教員の就職・職位・給与.pdf
PDFファイル 222.3 KB

       

     

数字で見る博士課程のグラフ・図

以下では各号に掲載できなかった「数字で見る博士課程」のグラフ・図を紹介します。あわせて没ネタもどうぞ!

第1号没ネタ「研究科名称ランキング」

第2号「分野別の単位取得満期退学率と最低修業年限卒業率の変遷」

本紙中で省略した1980年以前のデータです。なお,データは「年」であり「年度」ではないのでご注意ください。例えば,2016年とは2016年3月の卒業生ということですから,2015年度に卒業した人ということになります。